オーダーメイドスーツ4つの作り方:洋服の作成方法と種類の話

スーツ

数々のファッションブランドが、2018-19年のシーズンコレクションを発表する今日この頃。

ブランドによって個性や特色が違うように、洋服の作り手や作り方によっても完成品は大きく異なります。

例えば僕は普通に着る分にはMサイズで十分なんですが腕が少し長いので、いつかは自分にピッタリのオーダースーツとかを作ってみたいな~なんて思っている訳です。ただ単純に「オーダー」といっても複数の種類があり、それぞれ製作期間や工程、お値段などが違うんですよね。

今回は服飾関係のお話。オーダーメイドスーツを始めとした洋服の作り方について、いくつかの種類をご紹介します。

 

一般流通される既製服「プレタポルテ」


一般的な洋服店からスーツ店まで幅広く取り扱われているのが、特定のサイズ・寸法・デザインで作成・流通される既製服です。服飾用語ではフランス語の「プレタポルテ」と呼ぶことが多いです。

既製服というと“吊るし”と呼ばれる定型・定額販売の洋服を連想する方も多いかと思いますが、プレタポルテが指し示す物は高級既製服という品質の確保された洋服を表していることがほとんど。事実、パリコレクションなどのファッションショーで披露される洋服も、その大半をプレタポルテが占めます(この場合は大量生産・流通というわけではない場合も)。

一般流通される製品であることから、何よりも入手の容易さや時代にマッチしたデザイン、ファッションにあまり詳しくない方でも着用できる手軽さなど、汎用性の高さと敷居の低さがプレタポルテの強みと言えます。

当然、一般流通品だからといってオーダー製品よりもファッション性に乏しいというわけではなく、有名ブランドから販売されているプレタポルテも数多く存在します。オーダー製品と組み合わせる基本的なアイテムとして用いることも可能です。

 

敷居の低いオーダーメイド「パターンオーダー」


オーダースーツをもっとも手軽に楽しめる方法が、パターンオーダーです。イタリア語では「ス・ミズーラ」、英語では「メイド・トゥ・メジャー」と呼ぶことがあります。

パターンオーダーは、いくつかのサンプルスーツ(ゲージ服)に袖を通して自分に合ったものを選び、そこからジャケットの袖丈・着丈、パンツのウエスト・裾丈といった微調整を行えるオーダー形式です。2週間から4週間程度とオーダースーツの中でも最短期間で作れること、5万円以下の価格帯からでもスーツをオーダーできることなど、購入までの敷居の低さが魅力と言えます。

日本で数多く見られる紳士服量販店は、パターンオーダーを取り扱っているところがほとんど。全国に店舗を構える量販店以外でも、ビジネススーツを得意とする紳士服店ではパターンオーダーを取り入れているところもあるようです。所定のサンプルからスーツを作成することから既製服の一環として扱う場合も多いですが、“吊るし”のスーツよりも体系に合ったものを着る事ができます。

スーツの着こなしは、着丈やシルエットで決まると言っても過言ではありません。晴れの日の衣装やビジネスの勝負服としても着用する洋服ですから、最低でもパターンオーダーでスーツを作成し、自身の体にちょうど良くフィットするものをこしらえましょう。

 

高級注文服「オートクチュール」は一点モノか。既製服か。

洋服の製造工程や生産形式についてのくくりとして、「オートクチュール」という言葉を耳にする機会も多い事でしょう。

オートクチュールとは、直訳すればフランス語で”高級衣装”を意味する用語。ファッション用語としては“高級衣装店”とか”高級注文服”を指す言葉として用いられます。元々は1968年に組織されたパリ・クチュール組合(パリ高級衣装店組合事務局)に加盟する店舗や、そこで取り扱われる注文服のみを指していました。加盟条件には、自店舗で作った作品の年間生産数の規定や、大量生産の禁止などが盛り込まれており、かなり硬派なテーラーギルドであったことがうかがえます。

ただ近代に差し掛かると当組合に加盟しない店舗がオートクチュールを名乗り、その製造方法の一部を取り入れて衣装を販売したり、語義としては相反するプレタポルテを量販するケースも見られるようになりました。本来のオートクチュールは高級注文服を指す言葉ではありますが、その言葉の使われ方には既製服を指す場合もあるのです。いずれも品質やデザイン性に優れた服であることに変わりはありませんが、ファッション用語としてこのような事実があることは認識しておきましょう。

 

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生地やディティールにもこだわれる「イージーオーダー」


イージーオーダーは、ひとりひとりの体形に合わせて採寸し、パーツを組み上げていくオーダーメイドの作成方法。数百種類の型紙の中からその人の体形に合うものをパズルのように組み合わせ、一着のスーツを作り上げていきます。

イメージとしては銀座や麻布などに店を構えるスーツテーラーなどが挙げられ、これらの店舗ではイージーオーダーを中心に洋服を作っているところが多いです。実はイージーオーダーも「ス・ミズーラ」とか「メイド・トゥ・メジャー」と呼ぶことがあります。この部分については後でご紹介しますね。

イージーオーダーは単なる着丈の調整に留まらずパーツ単位で採寸・縫製を行っていくため、より細かな調整が可能になります。例えば、1日中スーツで過ごすのでゆったり着られる生地にしたい、プライベート用が欲しいのでお洒落に仕上げたいなど、着る人のニーズに合わせて生地の素材やディティールにこだわり、より快適に着こなせるスーツを作る事が出来ます。

また、なで肩・いかり型などによって肩周りや首周りに違和感があるとか、ウエストを細く見せたい、体が大きめなので自分に合う作りのスーツが無いなど……このような体系のサポート・補正などに対応できるのもイージーオーダーの魅力です。僕みたいに腕だけ長い人とかはかなり満足度の高いオーダースーツを作れるかもしれません。

 

オーダーメイドスーツの真骨頂「フルオーダー」


フルオーダーは、オーダーメイドの楽しみの真髄を味わえる作成方法と言えるでしょう。

イタリア語では“仕立て屋”を意味する「サルトリアーレ」、英語では”あつらえた”服「ビスポーク」と呼びます。ビスポークについては”お客さんとテーラーが話しながら(be spoken)調整していく”とおっしゃる方もいるようですが、良い表現ですし、あながち間違っていないので諸説ありとしても良いですね。

フルオーダーの流れとして、まずはテーラーと相談しながら生地を選び、身体の各部位を採寸、専用の型紙を作成、それを元に生地を加工していきます。お客さんの要望に合わせて職人が1から作成していくため、ラペル幅を調整したり、クラシックスタイルに仕立てたり、個性的な五つボタンをあしらったりと、メンズスーツという衣装で表現できるすべての加工を施せます。

型紙作成を終えたら、数か月ほどかけて生地を裁断。袖や裾を作り、ボタン穴を空け、プレス加工を施した生地をしつけ糸で縫合していきます。そして仮縫い状態のスーツを一度試着して微調整を加えた後に、ようやくスーツが完成するのです。これらの作業のほとんどをテーラーの手作業で行うため、1着が完成するまでの作成期間は早くとも2,3か月、よほどの大作となれば半年ほどの時間を要することもあります。生地を選び、シルエットやディティールを吟味、テーラーと最後まで対話しながら一着のスーツを作成する――。フルオーダーメイドには、もはや「スーツを買う」という枠組みを超えた楽しみがあるのです。

1着のスーツを完璧に自作できる職人と共に洋服を作っていくわけですから、フルオーダーを注文する際は顧客自身の知識や経験も求められます。そのため単に裕福であればフルオーダーすればいいという訳ではなく、より自分のシルエットに適したもの、こだわりを反映した衣装を作るためのスーツオーダーであるという認識が適切でしょう。

 

パターンオーダー/イージーオーダーの違いから分かる「ス・ミズーラ」の意味

いくつものゲージ服を元に着丈の調整を行うパターンオーダー。

顧客の体形に合わせて各パーツの型紙を組み合わせて作るイージーオーダー。

これら2つの組み合わせオーダーメイドは、どちらもイタリア語では「ス・ミズーラ」、英語では「メイド・トゥ・メジャー」、どちらも意味としては”サイズ合わせ””顧客に合わせて”と言われることがあります。端的に言えばパターンオーダーは”手直しのみ”、イージーオーダーは”組み合わせ注文”になりますが、実際のところ採寸データを元に国外の生産拠点で裁断・縫製を行うケースもあるため、それぞれの線引きは曖昧なことが多いようです。さらに重箱の隅をつつくようなことを言えばフルオーダーも個別採寸は行うため、広義では「ス・ミズーラ」という事が出来ます。どのような作成方法であっても、採寸を行う注文服であれば広い意味では「ス・ミズーラ」という事ができるのです。

そのため店舗ごとのサービスや作成方法の違い、はたまた広告表現の違いなどにより表現にバラつきがあったりしますが、テーラー個人がそれぞれのくくりを横断した作成方法でスーツを作り上げていくといった場合も多いようです。かなりややこしい部分もありますが、ファッションが文化である以上、そしてオーダーメイドが職人技である以上、カテゴリーの仕方やその言葉の指すものが流動的に変化することはやむを得ないことなのでしょう。

 

 

あとがき


今回の記事は他のお仕事でやっているファッション関係のライティングに近い書き方でやってみました。

文中では流れを崩したくなかったので触れませんでしたが、フルオーダーって多分リノベーションとか注文住宅を作るときみたいなワクワク感があるのかもしれませんね。どっちもある程度リッチな男性が好きそうな趣味ですし。

そして最近気づいたけど、やっぱお洋服って良いよなぁ。ファッション関係の記事はやっぱり楽しいから、この記事を書くにあたって部屋着からジャケットに着替えましたからね。しかしお洒落が楽しいって気づくのに24年もかかったよ。お金に余裕が出来たら着道楽も良い。

洋服は、良いものなんですよね。

 

はらだなう

(普段はいろいろ書いてます。)

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はらだなう

Webメディア作る人. 編集と書き物、マーケティング. 映画のブログ『週末は映画とおいしいもの。(https://nowinthemovie.com/)』を運営中. 最初はながら見して、好きな作品は何度も見るタイプ. シンゴジラ10周目.

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